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49号その他の記事

◆一期白書

五十歳の出会い 浅井ゆず

「まあっ、ご連絡ありがとうございます。さっそく本を送ります」
「いえ、まだお金を振り込んでおりませんので…」
「いえいえ、かまわないです。すぐ送ります」
 こうして、電話から溢れる大歓迎!の声にぐいっと惹かれ、私は川柳の世界に足を踏み入れた。五十歳の秋。九月だった。(後略)

桜の香り 天藤秀子

2016年3月31日。正午前に故郷の駅に降り立つ。町を歩くと風が吹くたびに香りの波が押し寄せて、やがてそれは桜の花の香りだと気付く。
今日は暑いくらいの陽気で、桜が一気に開花したのだろう。こんなタイミングで故郷に来たことがあっただろうか。
実家の墓じまいの相談を済ませ、駅前のパン屋さんでコーヒー飲みながらMを待つ。(後略)


ナンパ 前田邦子

その日は半ドン。土曜日の午前中だけ会社で仕事をすることを四十数年も前では、そう言っていた。
そのまま家に帰るのは、なんとなくユウウツだったので寄り道をすることに。
私の通う会社は神戸駅近くにあり、忠臣楠公で有名な楠木正成を奉っている湊川神社にも近かった。ちょうど五月二十五日はその神社で「楠公祭」があり、夜店が出ていた。まだ明るいので店を開けているのはチラホラだったが、金魚すくいやヨーヨーつりをして一人で楽しんでいたら、ヒョロリとした男の子に声をかけられた。(後略)

*毎号、会員誌友の印象に残った出会い(出逢い・出合い)について語ってもらうリレーエッセイ「一期白書」。三人三様の出合いをお楽しみ下さい。


◆新連載 噺のはなし(1)「延陽伯」さとう裕

 一人暮らしのやもめのところに縁談が持ち込まれる。祝言の準備に風呂へ行き、今晩嫁さんがやってくると大はしゃぎ。帰って来て部屋の掃除と順序があべこべ。さらに、嫁が来て、子どもが出来てと楽しい妄想を膨らませ、祝言を控えた男の嬉しさワクワク感を馬鹿馬鹿しくも落語チックに大いに楽しませてくれる。で、やってきたのが延陽伯。昔、京都のお公家さんの家に奉公していたので、言葉が少々難解。(後略)

*落語作家・さとう裕さんの新連載、「噺のはなし」。今回は「延陽伯」というお噺の紹介です。自己紹介ひとつとってもやたらとややこしいこのお嫁さん、はてどんな新婚生活となりますことやら。

ほかにもたくさんのエッセイや読み物があります。
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49号作家紹介・井上青柿

◆井上青柿50句「掌の蛍」より抜粋

古木にも恋の予感の梅一輪
鬱の字の刺繍解けば赤い糸
背中から火種のような愛が来る
結ばれた小指二本の放浪記
私が裸にされてゆく電話
恋の宿あっけらかんと海がある


◆井上青柿50句を読む 
「遠花火」茉莉亜まり より

 青柿さんの句の世界の男と女。その銘銘が結ぶ像と二人の関係性は、わたしの中で一貫している。をんなが匂いたつ大正モダンの和服の女。やさしさと優柔不断をふらふらと行き来する着流しの男。あるいは男はツイードの三つ揃えに蝶ネクタイ、頭には洒落たソフト帽。
  古木にも恋の予感の梅一輪
  指と指 月が静かに濡れている
  そうだったのそうかと月が蹤いてくる
  友達のままで梅の香着て帰る
  うつくしい言葉の使い方と、措辞の上手さに、シャッポを脱ぐ。一瞬ぼっと燃え上がったころで、決して永遠には上手くいかない。しあわせな結末もない。それをよく知っている二人には、喧騒や華やぎからは遠く咲く梅の香と、静かに濡れる月がよく似合う。(後略)

◆井上青柿さんインタビュー

●「青柿」という雅号について。
 尋ねられて「西施を換骨奪胎、転換すると青柿になるのだよ」と説明すると、殊に女性は「意味わかんない」と口を尖らせます。(中略)

●俳句、川柳との出合いは?
 四十代の後半になって、何か生涯の趣味となるものを持ちたいと思っていたところ、母から俳句を勧められました。(中略)
川柳との出合いは、俳句を始めた少し後。『川柳でんでん太鼓』で時実新子句の存在を知った時です。十七音字の響き合いから、小説的な場面や経緯、心象や表情までが鮮明に浮いて来るのを覚えます。こんな句を自分も作ってみようと思い、「川柳新子座」に投句を続けました。初入選は
  忍ぶ恋して戻れば棚にまぜご飯 (川柳新子座)
  恋の宿あっけらかんと海がある  (とうでん川柳倶楽部)

*毎回、会員誌友の中から「この人に会いたい」という人にフォーカスしてご紹介する作家紹介。自選50句、作品鑑賞、インタビューにより、たっぷりページを割いて川柳作家の素顔をご紹介いたします。

49号「群舞」より

群舞 2016年5月 小林康浩選 より

天井に夢の欠片をぶら下げる   石垣 健
全身で含み笑いの炊飯器     前田邦子
十七歳のわたしに逢いに行くベンチ 金子喜代
自己愛を満たしバカラのペアグラス 徳道かづみ
陽炎をまとって暖を取る独居     難波康子
四十肩撒き癖ついたカレンダー   天藤秀子
おじさんにだってヒラヒラすれば春  安井茂樹
よそ見している間に運が通りすぎ  伊藤玲子
逆転はもうない坂だ楽しもう     上月 長

ほか 会員誌友87名

*「群舞」は、会員・誌友各自の投句(5句まで)から、選者(小林康浩)の選により選び抜かれた作品を掲載。
選後評も併せて掲載しています。

49号「群像」より

群像 2016年5月

埼玉 井上青柿
鐘の音を拾って帰る独り部屋
引っ被った罪脱ぎ棄てず天へ発つ
一匹のオトコを呑んで猫のよう
咬んでみる読めば未練となる手紙
哄笑を傷心に塗り負け惜しむ

東京 徳道かづみ
子を産まぬ罪と決意と快楽と
産めよ増やせよ 声高に腐る国
ドリアンの匂い あたしという匂い
垂れ流す血潮生まれず死ぬ命
滅びゆく我がDNAに乾杯を

神奈川 近藤良樹
息止めて次の言葉を待つ長さ
行く先は決めず訊かずの雲はしる
雨の日のランチ別れを切り出せず
寒がりの岩から順に苔が着く
残照や今日も私は猛速度

鳥取 平尾正人
男です口と頭が繋がって
二分三分七分と春の定期便
不意打ちが続く落花に次ぐ落花
言い訳はしないさせない花に雨
女です口と心が繋がって

大阪 小原由佳
割り箸もきれいに割れず新年度
初めての音がしている窓の外
泡立ちも泡切れもいい調子者
選別と存在白い手が入る
孝行が続くおむつのまとめ買い

ほか 会員55名

*「群像」は、会員自選作品のコーナーです。毎回、各会員が自選5句を発表しています。

49号前号十選

前号秀句十選  安井茂樹選

逝く人へ雪は静かに降りそそぐ  徳道かづみ
徘徊してしまう黄昏やさしくて   上藤多織
空白を埋めるピースが足りません 平尾正人
悪いことばかりじゃなさそ海光る  中川 浩
宝くじは外れ 男運は大吉    丸本うらら
晩節はひと先ず横に置いて飯  石垣 健
しばし死ぬ転んだことを幸いに   小川敦子
予約しておく さみしくないように  新井恵子
ちゃんと泣く春には新芽めぶくよう 下山田靖子
きんかんの甘煮 ひとりっていいよ  夕 凪子


前号秀句十選  中川千都子選

零れ落ちてしまう体の一部分   平尾正人
土平す土に還りたいように    安井茂樹
晩節はひと先ず横に置いて飯  石垣 健
私だけ知らない話聞いている  梅田 旬
猿はそっと日なたを置いて出て行った  小林康浩
好意ある無視をつらぬくリノリウム  小川敦子
娘にしかられてきびしい躾したように  下山田靖子
雪うさぎ耳を忘れて行きました    道家えい子
いつか忘れる人が小指に住んでいる 中野文擴
相方を亡くしてからの漫才師   穴原明司


前号秀句十選  一橋悠実選

低音で笑え 善人止めようぜ   徳道かづみ
そのうちに読点となる浅い傷   杉山昌善
ほめられてうめももさくらみんな咲く 香月みき
散らかった不安を固め芯にする  前田邦子
一滴のぽつりと生まれぽつり散る  中川 浩
どっちでもいいと答える無関心   川本 畔
美しい言葉今年は光らせる    岸本きよの
心の傷は縫合できません    沢井 啓
回転木馬誰が先頭なのでしょう  門田 浩
みかん剥く女の指に有る未練   流郷貞子


前号秀句十選  夕 凪子(野上藪蔵代理)選

逃避するたっぷりクリームを塗って   香月みき
色重ね重ねて傷む蝶の羽      金子喜代
雨だから出て行きますを延期する  若林よしえ
悟られぬようにぎりぎりショートヘア  新井恵子
そのうちに読点となる浅い傷     杉山昌善
晩節はひと先ず横に置いて飯    石垣 健
悪いことばかりじゃなさそ海光る  中川 浩
思い出し笑いゆっくり溶けるチョコ  杉浦まりこ
もう海はあきらめている袋せり    富田房成
雨の午後こんにゃく色のバスが行く 小林康浩


前号秀句十選  渡辺美輪選

ライバルの後塵を浴びちりぬるを   近藤良樹
透明な人をみんなで分かち合う   小原由佳
ああ空の広さ忘れておりました   上藤多織
ジグザグの心で渡る丸木橋    前田邦子
急斜面 ふいに戦意が湧いてくる 宮 あき子
空白を埋めるピースが足りません 平尾正人
後悔の血中濃度維持させる     野上藪蔵
配られた愛など海に投げ捨てよ  佐渡真紀子
低音で笑え 善人止めようぜ    徳道かづみ
きんかんの甘煮 ひとりっていいよ 夕 凪子

*「前号秀句十選」は、前号掲載の会員自選作品「群像」から毎回5人の選者が各10句を選び、短いコメントと共にその句を鑑賞するコーナーです。5人の選者の選とコメントの個性をお楽しみください。

*本来は野上藪蔵さんが選者のお一人でしたが、今回は熊本の地震災害のために多忙を極める藪蔵さんの代理として、夕凪子さんが代理で選者を務めております。

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