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40号その他の記事

連載エッセイより

◆小児科の窓から(4)平尾正人 より

 喘息で入院中のS君。彼とは長い付き合いで、若くて美人のお母さんとも顔なじみ。カルテを見ると昨夜ゼイゼイがひどくて夜中にあまり眠れていないらしい。S君の部屋へ行って扉をそっと開ける。付き添いベッドに寝ている女性が目を覚ます。「あれ?お母さんは?」と尋ねると……(後略)


◆ときめき地図(15)「アジフライ定食」 中川千都子 より

 母を連れて警察署を訪れた。暗く大きな灰色の建物である。
「……あのう、母が詐欺被害に遭ったのですが」
 カウンター越しに2階の刑事課へ回るように指示される。エレベータもなく、私は母を半ば抱くようにして、古びた手すりの階段を上がる。一歩、また一歩。母の重みと温かさ。私が守らねば。守らねば、母を。(後略)


◆こん・紺・コラム(1)「白」 久保田 紺 より

 子どもの頃は今よりもっと、寒かったと思うのは気のせいだろうか。
 雪はそんなに降らないものの、地面はすぐに凍って真っ白になった。私が育ったのは大阪と奈良の県境の小高い山のてっぺんだったので、道が凍結するとたいへんだった。(後略)


*会員誌友の連載エッセイから、ほんの一部をお裾分け。続きは本誌でどうぞ。


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40号作家紹介・小川敦子

◆小川敦子50句「また雪へ」より抜粋

やわらかな雨なつかしい人の夢
騙されてあげる青信号つづく
しばし抱く読んだら焼けという手紙
ていねいに縫う傷跡が残るよう
愛されています満たされてはいない
指輪捨てた廉(かど)で自由の刑に処す
たましいのかたちに溶けるガラス玉
目を逸らす気持ちが通じ合いそうで
月曜の朝煩悩の髪を梳く
雪のなか雪へ帰ってゆく映画

◆小川敦子五十句を読む「恋、自由の刑」杉山昌善 より抜粋

(前略)第二回現代川柳「作家賞」の審査で選者をした折、わたしは、敦子さんのエントリー句に最高点を入れた。その時も「恋」の連句であった。詠み手と読み手は、結局は相性。特別な理由もなく、わたしは、敦子さんの句が好きなのである。(中略)わたしの目指しているドラマチック川柳にぴったりの恋の句群なのである。(中略)
  芥子は朱 血は流しつつ生きるもの

◆小川敦子さんインタビューより

・文芸としての川柳。どこに魅入られましたか?
 川柳といえばおかしみ、穿ち、風刺を詠んだものしか知りませんでした。新子先生の作品に出会って、こんなにも自由に人の心情を詠むことができるのかと驚きました。十七音字という制約の中に、表現の大きな可能性があることに魅かれます。

・どのようにして作句されますか?
 まず、気持ちの動きありき、です。気持ちを大事にしながら、設定はこう変えた方がいいかな、と推敲したりもします。

*毎回、会員誌友の中から「この人に会いたい」という人にフォーカスしてご紹介する作家紹介。自選50句、作品鑑賞、インタビューにより、たっぷりページを割いて川柳作家の素顔をご紹介いたします。

40号「群舞」より

働かぬ蟻にもタオル貸してやる   秋田 石垣 健
かなしみをほどいてゆくと雲になる 兵庫 前田邦子
又聞きの耳は不満に満ちている  鳥取 平尾正人
だんだんと理由なくなる我が素顔 大阪 香月みき
雑踏に溶けてたちまち無印に    香川 門田 浩
まだまだと蔓を伸ばしているゴーヤ 島根 別所花梨
コスモスに不安不安と囁かれ     青森 岡田千加子
水滴が穿った傷の深さかな     神奈川 近藤良樹
金木犀 過去が優しいフリをする  広島 一橋悠実
からっぽの声でメールが届くのね  富山 新井恵子
許さないずっと絞っているタオル  熊本 野上藪蔵
ピチカート閉じた窓から忍び出る  兵庫 武田順一
こおろぎも秋の名残りを惜しむのか 兵庫 松元 明
あれなぁに 何でもないと言う秘密  東京 山口こたい

他 会員誌友82名

*「群舞」は、会員・誌友各自の投句(5句まで)から、選者(渡辺美輪)の選により選び抜かれた作品を掲載。
選後評も併せて掲載しています。

40号「群像」より

    兵庫 中川 浩
指めがね水平線が近くなる
老いという初体験に転びそう
起きて言う寝る前に言うまあだだよ
サイズMでっかく生きたかったのに
残高照会ほんと小さな秋である

   香川 丸本うらら
吊り皮の持ち手を替えて今朝の秋
錠剤を飲むお手玉が舞っている
内側の黄ばみを洗う秋彼岸
水を飲む復元力を溜めている
具沢山の味噌汁 今日のスケジュール

   京都 穴原明司
たそがれを踏んでよろめく痩せた脛
数知れぬ一人ぽっちの虫が鳴く
子の世話になんぞなるまい日に万歩
断崖を覗けば招く白い波
非常口閉じてゆったり向き直る

   神奈川 若林よしえ
速やかな返礼に知る代替わり
小突かれてへらへらしだすアルミ缶
ミーハーで悪いか石や木の仏
気にしない鴉はいつも鳴いている
そのままで済めば見知らぬ人の事

   福島 岡部房子
ハングリー恥じてはならぬ子を諭す
這い上がる力を残し転げきる
夫がいる只それだけで安んじる
惜歳の情が身にしむ鳥逃がす
力なき虫の音色に許される

   東京 原口美智江
身の内にボールあるらし弾んでる
吠えながらいつ止めるかを思案する
包帯の巻けない心傷だらけ
空蝉が枝に残って夏終る
ふんわりと惚け携えて老いに入る

他 会員57名


*「群像」は、会員自選作品のコーナーです。毎回、各会員が自選5句を発表しています。

40号「前号秀句十選」

前号秀句十選 香月みき選

冷蔵庫の奥から取り出した未来  渡辺美輪
一筆箋しかも二文字好きと書く   井上 哲
何度でも恋する長いすべり台    新井恵子
畑まで迷惑メール届きます      安井茂樹
納得のいかぬ赤飯食べている    宮本草子
ちょっと浮いて考えないようにしている 久保田 紺
日の丸が大きくなって おそろしい  杣 游
指さし確認夕景へと溶ける      丸本うらら
道草のぶらりぶらりと満ちている  上藤多織
このように生まれてそのように 薊 茉莉亜まり


前号秀句十選  井上青柿選

淡い恋ぎりぎり止めるホッチキス   近藤良樹
そっと来て貝のコーラス聴く浜辺   門田 浩
途中から不眠の訳を知る羊     若林よしえ
空蝉の軽さの中にある昔      杉山昌善
石鹸を二つ合わせている妥協   富田房成
JとLの形に干からびたミミズ    平尾正人
ふて寝する夫をそっと蹴ってみる  松本光江
これは蝶あれもまた蝶死者が来る 茉莉亜まり
真夜中の逢引き猫の声出して   夕 凪子
間違えた恋の数だけ恋をして   渡辺美輪


前号秀句十選 近藤ゆかり選

殉国の思いも使い捨てだった    石垣 健
田舎暮らし自然確かに豊です    杉浦まりこ
なつかない猫の必死な目が好きで 徳道かづみ
神様の留守に生まれた私です    鈴木厚子
素足に下駄少しにんげん取り戻す  太田牧子
バッサリと縁切る心地良い疲れ    馬場美那子
言い訳を飲み込んだまま傘たたむ  田村 尋
このように生まれてそのように 薊  茉莉亜まり
水の星だってさ明日も降るってさ   夕 凪子
嘘をつくつもりなどない八月は     渡辺美輪


前号秀句十選  平尾正人選

雑草に負けた私と唐辛子       安井茂樹
嘘をつくつもりなどない八月は    渡辺美輪
沈まないように結んである夕日   久保田 紺
淡い恋ぎりぎり止めるホッチキス   近藤良樹
失礼な人に私はなっている      加島 修
面倒くさくて優しい振りばかり     野上藪蔵
一病息災今日は頭痛にしておこう  梅田 旬
水の星だってさ明日も降るってさ   夕 凪子
ひまわりが咲いたゴッホのひまわりが 高橋兎さ子
道草のぶらりぶらりと満ちている    上藤多織


前号秀句十選 茉莉亜まり選

殉国の思いも使い捨てだった      石垣 健
沈まないように結んである夕日     久保田 紺
山姥にされ好物の真桑瓜        上藤多織
掌の中の孤独を雨は読む        芳野寛子
指差し確認夕景へと溶ける       丸本うらら
空蝉の軽さの中にある昔        杉山昌善
ここまでと大樹が揺れて引き返す   富田房成
途中から不眠の訳を知る羊       若林よしえ
今日もまた未練星座を組みかえる   宮 あき子
執拗に追うべし蓮を咲かすべし     夕 凪子

*「前号秀句十選」は、前号掲載の会員自選作品「群像」から毎回5人の選者が各10句を選び、短いコメントと共にその句を鑑賞するコーナーです。5人の選者の選とコメントの個性をお楽しみください。

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